ご挨拶



 「えーっ、在日韓国人にも人権があるの?私、今まで知らなかったわ」と言った友人の言葉がよく思い浮かびます。昔むかしの話ではありません。6、7年前のことです。友人も私も日本生まれの日本育ちで彼女も私も仕事に精を出して税金も払っているのですが、あまりにも長い間無権利状態におかれていると、人がこのような気持ちになっていくことはよく分かります。私もかつては年金がなくて当たり前、就職が出来なくて当たり前、銀行融資なくて当たり前、公営住宅に入れなくて当たり前、児童手当なくて当たり前、と思い込んでいました。浅はかでした。しかし、互いに人権問題を考えていくなかで人間として生きて行くとはどういうことなのか、社会貢献とは働いて納税して家族と生活することだけなのかなど、時にはまじめに人生を考えながら、身の回りの在日コリアンに対する差別事象を教えてもらい、学習していくなかで大切な社会貢献のひとつは、不条理と戦うことであると気付きました。会員の一人一人に確かめたわけではありませんが、このように考えている人たちがKMJを支える構成員であると思っています。


  植民地時代の同化政策による民族性の喪失を復活させるため、民族学校を卒業させたわが子の姿に目を細めて喜ぶ一方、就職に際して、履歴書に民族学校出身という日本社会にとって不利な記載を書くことに、どれほど多くの親子が戸惑ってきたことでしょうか。就職を諦めたり、消極的になったり、あるいは日本名を使わざるを得なかったりしている現状が何10年間も繰り返されてきているのです。社会正義の根幹は民主主義だと考えます。KMJは在日外国人の人権問題を研究し啓発しながら民主主義の構築に小さい力ながらも貢献してきましたが、まだまだ問題は山積しているだけでなく、新たな問題が次々に出てきています。


  KMJが社団法人と認可されて6年を経過いたしました。在日外国人と日本人会員の皆様がたをはじめとして、KMJの活動を理解し協力してくださっている行政の皆様や企業の方々、そしていつも応援してくださる皆様方にあつくお礼を申しますとともに、今後もあたたかいご支援とご協力をお願い申し上げます。私達も一層の努力を重ねていく所存です。

 理事長:鄭 早苗(チョン・チョミョ)
【プロフィール】

 大阪生まれの在日2世。現在、大谷大学教授。専攻は古代韓国・朝鮮史。神戸大学文学部卒業後、大阪市立大学大学院文学研究科修士課程修了。主な活動として大阪府在日外国人有識者会議委員、京都女性協会理事、豊中国際交流協会理事、アジア太平洋人権情報センター評議員、NPO法人在日コリアン高齢者支援センターサンボラム理事長、(社)大阪国際理解教育研究センター理事長などを務める。


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